2023年1月23日 寒いけど寒くないウランバートル
幕の内も過ぎてしまいましたが、新年あけましておめでとうございます。このマイナー日記ブログも見てくださってる方がいるようで嬉しいです。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
今年のモンゴルには例年以上の寒気が訪れ、ウランバートルでも夜中に-40℃を超える日がありました(実は年末から約1ヶ月間は日本に一時帰国していたので、その寒さを十分には経験していません)。
マイナス気温と聞くと、日本人の感覚では非常に寒い場所という印象を抱くと思います。実際寒いのですが、ある意味では寒くありません。今年一発目の日記は、「寒いけど寒くないウランバートル」というテーマで書いて行こうと思います。
寒いけど寒くない(1)――屋内は暖かい
モンゴルの屋内が暖かいということは、最近は結構日本でも知られてきている感触があります。北海道と同様、モンゴル都市部の建物内部はセントラルヒーティングシステムで暖められ、基本的にどこの建物も一定範囲の温度を保っています。セントラルヒーティングについては、昨年9月16日の日記「集中暖房の稼働が始まりました」でも書いているので興味のある方はご覧ください。
モンゴルは外は寒い一方、家の中は非常に暖かく暑いくらいの時もあります。(外は)寒いけど(室内は)寒くないのです。
寒いけど寒くない(2)――気温に応じた格好をすれば多少マシ
日本を離れて思ったことの一つに、日本の人は寒さに対応した格好をしているとはいえないということです。その最たるものは、冬に生足でスカートを穿く女子高生です。それ以外にも、コートの前を開けっ放しにしたり、そもそも上着が薄かったり、ブーツではなくスニーカーを履いていたり…。気温に対して薄すぎる装備で出かける人が多いと感じます。
一方、冬のモンゴルでは、おしゃれに全振りした格好をすると冗談でなく死が待っています。そのため、ほぼ全員がクルトカと呼ばれる分厚いダウンジャケットを、前のジッパーを閉めて着用します。人によっては、ウンティ*1ことウブリーンゴタル(冬の靴)と呼ばれる、表面が鹿の毛皮で内側が我が羊の毛で覆われた暖かいブーツを履きます。ちなみに、私もウンティを愛用しています。そして、頭には毛糸の帽子、首にはマフラー、手には厚手の手袋、ズボンの下にはデニール数が3桁のタイツを着用します。ここ数年では、感染症対策(2023年1月現在モンゴルではコロナ禍がほぼ収束していると見られていますが)と冬の大気汚染対策も相まって、マスクをする人もよく見かけます。
このようにがっちりと防寒対策をした格好だと、-20℃台中盤くらいまでであれば歩いていると少々汗をかくこともあるほど暖かいです。寒いけど(しっかり対策をすればある程度は)寒くないということです。
寒いけど寒くない(3)――下には下がいる
下とは気温のことです。日本でも有名なオイミャコンを有するロシア連邦サハ共和国では、人口が多く気温が上がりやすい都市部でも-62.7℃を記録しました(参考記事:世界で最も寒い都市、ヤクーツクで零下62.7度を記録(CNN 2023年1月19日))。 ウランバートルは「世界一寒い首都」ですが、ヤクーツクは「世界一寒い都市」といわれるそうです。とはいえ、例年の冬の平均気温は-40℃だそうなので、この寒さはヤクーツク住民もびっくりな寒さだと思われます。
気象予報士森さやか氏によると、今冬のロシアは暖冬と言われていたものの、年明け頃からジェット気流の大きな蛇行が発生し、それによって寒気と暖気の境目を吹くジェット気流がロシア上空で南に下がり、北極から強烈な寒気が降りてきてロシアに流れ込んでいるとのこと。これが原因で、記録的な大寒波が発生したようです。この北極で発生した寒気は東や南へ移動し、シベリア、中央アジア、モンゴルや中国等大陸部を中心に気温低下を引き起こしています(参考記事:強烈寒波の到来でロシア-62.1度 "冬将軍"はこの先アジアへ(Yahoo!ニュース 2023年1月11日))。
私が学部生時代に留学していたシベリアの都市ウラン・ウデ市*2でも、連日-40℃近い気温を記録しています。私が留学していた2017~2018年の冬は地元の友人曰く暖冬で、毎日-20~-30℃をさまよっていました(当時の私にとっては寒かった)。それと比較すると、今冬がいかに寒いか分かります。寒さは身体の危険に直結するため、ローカルニュースArig usによると、小・中・高校生は気温に応じて休校措置が取られます。-33〜34℃は4年生以下、-35℃は5年生以下、-36℃は6年生以下、-37℃は8年生以下、-38℃とそれ以下の気温は11年生までが休みとなります。
ウランバートルは(シベリア地域と比較して)寒くない、とは言えそうです。
~余談~
ウラン・ウデの-30℃とウランバートルの-30℃では、前者の方が非常に寒く感じた記憶があります。その原因として、知人は「近くにバイカル湖という大きな水があるから湿度が高くなり、それが原因でより寒く感じるのでは」と言っていました。私もなんとなくそんな感じがするのでしょうが、実際どうなんでしょうか。
以上、「寒いけど寒くない」ウランバートルについてつらつらと書いてみました。
色々な意味で「寒くない」と言えるとはいえ、やはり日本で20年以上生きた人間にとってはウランバートルの気温は堪えます。セントラルヒーティングがなければ病んでいたことでしょう。
今週辺りから日本もぐっと冷え込むと聞きましたが、皆さま暖かくしてお過ごしください。
*1 ウンティとは、ツングース系言語で「靴」を意味することばで、現在のロシア語用法では本文に書いたような靴を指します。シベリア在住のロシア人も愛用しています。ちなみに、ヴァレンキ(ロシアのウールでできた靴)とは別物です。
*2 現在、行政的な「シベリア」の東端はイルクーツク州までとなっており、ブリヤート共和国は2018年秋に極東地域へ移管されました。しかし、気候的・地理的・歴史的にブリヤート地域はシベリアと言った方がしっくり来ますし、地元住民の自称も「シベリア人」であることを鑑み、今後もよほど考えが変わらない限り「シベリア」の都市ウラン・ウデと表記します。
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