2022年6月24-26日 セレンゲ県スフバータル旅行 1. モンゴル縦貫鉄道編その①:列車紹介

 週末を利用して、ロシア国境に近い町であるセレンゲ県スフバータル*1に行ってきました。今回の旅行の目的は、①養蜂場見学、②地方の風景を楽しむことです。モンゴル暮らし9ヶ月目にしてようやく地方に行くことができました。


 セレンゲ県はモンゴルで最も養蜂家が多い県と言われています。ウランバートルからの移動手段はモンゴル縦貫鉄道の列車だったのですが、ウランバートル~スフバータル駅間の線路沿いにも養蜂場を見ることができました。

 この旅行では書きたいことがいっぱいあるため、内容で分けて投稿したいと思います。今回は移動手段について記録する「1. モンゴル縦貫鉄道編その①:列車紹介」です。

 モンゴルの鉄道について詳しく知りたい方には、日本人のモンゴルの鉄道ファンによるマニアックなサイトの閲覧をお勧めします。この記事を書く際にお世話になりました。


1. モンゴル縦貫鉄道について

 1947年、旧ソ連の支援の下でナウシキ(ソ連側国境)~ウランバートル間の鉄道建設が始まったのがモンゴル縦貫鉄道の端緒です。今回の旅行の出発地であるウランバートル駅(以下UB駅)は1938年に、目的地のスフバータル駅(SB駅)は1949年に運営開始しました。1952年、モンゴル人民共和国(当時)、ソヴィエト社会主義共和国連邦(当時)、そして中華人民共和国の三政府間でウランバートル~エレンホト(中国側国境)の広軌鉄道の建設が合意され、1956年に上記区間が開通し現在の姿になりました。また、同年にモンゴル縦貫鉄道を経由して北京とモスクワを結ぶ国際列車が開通しました。

 道路網整備が遅れているモンゴルにとって、縦貫鉄道を含むモンゴル国内の鉄道は、建設以来国内外の輸送に重要な役割を果たしています。現在、縦貫鉄道を運営するウランバートル鉄道だけで国内輸送の70%を担っています。

 ウランバートル鉄道は、モンゴルと旧ソ連が50%ずつ出資して発足した合弁会社です。それを表すように、ウランバートル駅舎の中には両国の旗が飾られています。

駅舎中央の内部にある会社のマークと国旗。ここの空間は待合室になっている。

 しかし、旧ソ連崩壊後は援助が停止され必要物資の調達が困難となり、物流が滞り国の経済に悪影響をもたらしました。モンゴル政府はこの問題を解決するために日本に協力を要請しており、日本は1990年よりODA予算でモンゴル国内鉄道に対して様々な援助を行っています。


2. 駅舎の様子

ウランバートル駅


スフバータル駅

ズーン・ハラー駅(途中停車駅)

 UB駅とCB駅のどちらも、駅舎の外見は基本的に開業当時の姿を残していると思われます。とはいえ、UB駅駅舎にはコンビニが2店舗入るなど、数年前とは売店事情が変化しています。私が最後にUB駅を利用したのは2018年7月でしたが、その時は駅舎の売店はキオスク的なものしかなく、そもそもCUは町中にあまり店舗を展開していませんでした。

UB駅の食堂にあるメニュー表

 ここからは主にUB駅の様子について書いていきます。
 駅舎中央入り口をくぐってすぐのスペースは待合室で、その部屋の端には小さな本屋がありました。奥に行くと食堂、キオスクやコンビニ等があります。2階には免税店がありましたが、現在は営業していませんでした。旅の同行者の一人曰く、コロナや戦争で輸入商品が入ってこないからではないかとのことでした。

駅舎中央


ウランバートル駅舎中央の待合室

閉店中の免税店。2階の少しわかりづらい場所にある。


駅舎東側。壁にDUTY FREEと書いてあるがそこに免税店があるわけではない。

 列車の乗り場は以下の動画のような様子です。駅舎周りは、シベリア鉄道乗車経験のある方、もしくはRussian Train Tripなどシベリア鉄道ゲームをプレイした方にはお馴染みの風景が広がっています。白いホーム、ベンチ、駅舎の食堂、売店、出発を待つ人々、出迎えや見送りの人々等等々。ちなみに、日本の新幹線乗り場と違い、ホームに転落防止のドアはついていません。別のホームに行くには地下通路を使います。

駅のホーム(無音動画)

ホーム連絡用地下通路

ホーム

3. 列車の様子等

 列車の側面には、「УБТЗ(Улаанбаатар төмөр зам, ウランバートル鉄道)」、列車番号、そして行き先等がモンゴル語キリル文字で書かれています。列車内外には英語表示がほとんどないため、旅行者はキリル文字を読めるようにした方が良さそうです。

今回乗ったウランバートル~スフバータル駅往復列車

乗車口。ズーン・ハラ―駅で撮影。

 乗車の時間になると、駅員が乗り口でチケットと身分証確認を行います。今回のチケットはレシート紙に印字されたものでした(Eチケットも購入可能です)。チケット確認を終えたら、列車内の自席に移動します。今回私と旅の同行者が乗った席はドア付きの4人コンパートメントの寝台車でした。写真を撮り忘れてしまったのでコンパートメント全体の載せることはできません。「シベリア鉄道 4人寝台」等のキーワードで検索して出た画像をご覧ください。

 廊下は木目調の内壁、窓、カーテンで構成され、落ち着いた雰囲気です。ちなみに、カーテンレールは窓枠のゴムにさしているだけで、子どもがそれを掴んだだけで落ちるくらいの固定具合でした。

コンパートメント内の窓

通路

 各車両の端には車掌室があります。紙コップがほしくなったらここで買うことができます(2022年6月時点で200トゥグルグ)。また、車掌室前にはサモワール(湯沸器)があり、自由に熱湯をもらうことができます。客席列車の構図は冒頭のファンサイトのこのページに詳しく紹介されています。

 列車の前の方には食堂車があります。今回の旅では、下車するまで食堂車付き列車とは知らず利用できませんでした。食堂車の外見はこんな感じです。

キリルアルファベットで「レストラン」


4. おまけ

 ウランバートル鉄道公式サイトの「360°」タブ下の「түүхийн музей」(歴史博物館)をクリックすると、ウランバートルにあるウランバートル鉄道歴史博物館をストリートビューで見ることができます。

 近くで見ることができる資料は一部に限られていますが、ミニチュアの鉄道、制服や様々な模型が飾られており、モンゴル語が分からなくても楽しく見ることができます。

歴史博物館入口

博物館内1

博物館内2

(本記事の写真は全て筆者撮影。)
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*1 ウランバートルとスフバータルのバートル/バータルはラテンアルファベット表記ではどちらもbaatarになりますが、当ブログではウランバートルは慣習的な呼び名を使用します。


参考資料(最終閲覧日は全て2022年7月3日)


概要・歴史・計画新線:UB RAILFAN  モンゴル鉄道ガイド
https://web.archive.org/web/20181106182223/http://www.geocities.jp/ub_railfan/guide/gaiyou.htm

その他・雑情報:UB RAILFAN  モンゴル鉄道ガイド
https://web.archive.org/web/20181106182244/http://www.geocities.jp/ub_railfan/guide/sonota.htm

座席番号表:UB RAILFAN  モンゴル鉄道ガイド
http://ubrailfan.sakura.ne.jp/guide/seat-no.htm

鉄道輸送力整備事業:ODA見える化サイト JICA
https://www.jica.go.jp/oda/project/MON-P1/index.html

第二次鉄道線路基盤改修計画:ODA見える化サイト JICA
https://www.jica.go.jp/oda/project/0302500/index.html

モンゴルの「第二次鉄道線路基盤改修計画」ほか1件に対する無償資金協力について:外務省
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/data/zyoukyou/h_15/030623_3.html

Танилцуулга:УЛААНБААТАР ТӨМӨР ЗАМ
https://ubtz.mn/about/11689f147b796161fdbfece681a9dd2ad7

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