2022年10月23日 チンギス・ハーン博物館に行きました
今日はネットで出会ったカルムイク人とのオフ会も兼ねて、今月11日に開館したばかりのチンギス・ハーン博物館に行ってきました。
いつもの出来事に増して突っ込みポイントが多かったので、ちょいちょい突っ込みながら日記を書きました。突っ込み部分は白文字にしているので、読みたくない方はスルー出来るようにしています。読みたい方は古(いにしえ)の個人サイト時代のように文章を選択・反転してください。
【関連サイトリンク】
チンギス・ハーン博物館公式サイト(モンゴル語、英語2言語)
チンギス・ハーン博物館の開館についてのニュースはこちら(モンゴル語)。
【博物館について】
当地文化省によると、この博物館はモンゴルにおける最初の政府機構を持つ国家である匈奴から20世紀における復活までの時代の資料や研究成果を、各時代のハーンの業績を中心に構成して展示しているそうです。
突っ込みポイント① 既存の博物館とのキャラ被り
入場前は既存のモンゴル民族博物館(1924年設立の老舗)とキャラ被りしてないかと思いました。そして実際に割とキャラ被りを起こしていたのですが、この博物館の特徴はチンギス以前の偉大な王たちやチンギス・ハーンとその子孫たちなど、ハーンを中心に展示を構成し歴史を提示しているところだなと思いました。そのテーマ設定の関係で、独立以後の時代に関する展示はありませんでした。
【開館時間、料金】
2022年10月23日時点での開館時間と料金は以下の通りです。
開館時間:
夏季 各曜日9時~19時
冬季 火~日9時~18時 月曜休館
料金:
大人 30,000トゥグルグ
家族 20,000トゥグルグ
大学生 15,000トゥグルグ
子ども 0トゥグルグ
※通常料金にプラス5000トゥグルグすると入場チケットがゲレゲ(牌子。モンゴル帝国時代の政府官僚等が携帯していた通行証)になります。これを使って君も中世モンゴル人高官になろう。
大人料金の入場では金のゲレゲになります。
そういえば入場ゲートにいたアルバイトっぽい若いモンゴル人のお兄さんがめちゃ線が細くてアイドルっぽくてかわいかったです。
突っ込みポイント➁ チケットの区別
大人と大学生の対象者ははっきりしてるし、子どももまあきっと大学生以下なんだろうと予想できるんですが、「家族」チケットってなんでしょう。家族セットという意味だと「大人」より安い意味が分からない。
突っ込みポイント③ 学生料金
私は学生証を持っていなかったのですが(本当に学生ではある)、「学生証持っていなくても学生チケットを買えます」と案内係の方に言われました。それ大丈夫ですか?
【展示内容】
階数はうろ覚えなのですが、多分6~7階くらいあった展示場では各階ごとにテーマが分かれていました。
低層階は古代モンゴル高原で活躍した政権、中層階はモンゴル帝国時代、展示場最上階はパクス・モンゴリカにおける世界各地からの出土品や諸外国へのモンゴルの影響などこの時代のモンゴルの栄光に関する展示になっていました。
解説は強気にモンゴル語キリル文字とモンゴル語モンゴル文字のみ。展示の横にあるQRコードを読みとれば英語とロシア語の解説PDFが出てきます。また、恐らく何かしらのルートで予約すれば英語のできる学芸員さん?がつきっきりでガイドをしてくれるようです。
突っ込みポイント④ 再現ジオラマ
古代モンゴル高原における政権の王たちの再現人形の顔つきがチンギス・ハーン風の顔と体格で、歴史の素人ながら「本当か??本当に彼はそういう顔立と体格だったのか??あとついでに服装が中世モンゴルっぽすぎないか??」と思いました。
突っ込みポイント⑤ モンゴル帝国最盛期後のハーンたちの展示の肩身の狭さ
チンギスとその孫くらいの代まではかなり説明書きが充実し展示スペースが大きかったにもかかわらず、それ以後の時代から元朝最後のハーンであるリグデンまでの代があまりにも簡単に小さくまとめられていました。博物館のコンセプトが恐らく「モンゴルの栄光の時代を見せる」ところにあると思うので仕方はないと思うのですが、もうちょっとスペース割いて説明してもいいのでは?特にダヤン・ハーンとマンドハイの時代。ちなみに、リグデン・ハーンのモンゴル高原出戻り(14世紀)から展示で詳しく解説してくれる時代がぶっ飛び、次のメイン展示の時代は清朝支配時代のハルハ3ハーンの時代(16世紀)になっていました。
【客層】
開館直後の時期ということもあり、朝から多くのにぎわっていました。主な見学者は、比較的経済的余裕のある層のモンゴル人家族、英語圏の旅行客、ロシア人(旅行客なのか避難者なのか元からいた在住者なのか分からない)、学校の社会科見学で来ているモンゴル人小学生集団でした。英語圏観光客集団や社会科見学集団にはそれぞれガイドが付き、特に社会科見学の方は結構なスピード感で展示を回っていました。今日はこの2集団の解説をちょいちょい盗み聞きできたので結構助かりました。
【オフ会の話】
展示も興味深かったのですが、一緒に行ったカルムイク人のA君も中々に面白い人でした(個人情報なので名前は伏せます)。彼はロシアで9月末に出された部分的動員を受けてモンゴルへ避難した人でした。モンゴル語学習はモンゴルに来てから始めたとのことで、会話では主に英語を使用しました。
A君と知り合ったのは某SNSなのですが、そこでの投稿内容と彼の属している界隈から見るに、割と強めの民族主義者なのではと感じていました。実際会ってみると、やはり発言内容やモンゴル帝国時代の展示に入った瞬間のテンションの上がり方で、強めの大モンゴル主義者ということが分かりました。彼は大モンゴル帝国の地図を見るや否や、手を広げて「Их Монгол Улс(大モンゴル帝国)...」と感嘆しながら地図の方に歩み寄っていきました。この光景が私のツボに入ってしまい、彼はまじめにそれをやっていたのでしょうが私は笑ってしまいました(ごめんね)。
しかし、カルムイク(オイラート)はチンギス・ハーン系統の集団ではなく、なんならモンゴル帝国に征服された側なので、なぜ大モンゴル帝国時代を好きなんだろう?と気になりました。そこで、どうして自分たちを征服したチンギス・ハーンを尊敬しているの?モンゴルという集団には後から組み込まれたからチンギス系統とは関係ないよね?と聞いてみました。すると、「オイラートはチンギス以前からいた集団で、チンギス系統ではないことは理解している。チンギス・ハーンは兵士としてオイラート人を尊重してくれた。だから好き。」と答えてくれました。同時に「(今は英語で話しているから)自分の思っていることをすべてきちんと言うことができない」ともどかしそうに話してくれました。彼が英語で話してくれた内容も本心に近くはあるのでしょうが、それ以外にも色々な思いや要因があって大モンゴル主義に傾倒しているのだろうなと思います。
この会話以外にも、ロシアの歴史記述におけるモンゴル表象がどんなに感情的で酷い描き方をされているかも力説してくれました。また、ロシア人が近くにいても全然話しかけなかったり(これはたまたまかもしれない)、ロシア語を話すアジア系の人を見て「あの人はルースキー*だよ」と言ったりと興味深い言動や行動をしていました。
*ルースキー(русский)は本来民族的ロシア人のことを指す言葉で、民族関係なくロシア国籍者を指す際はラシースキー(российский)と言うのが標準的な使用法(のはず)です。とはいえロシア内のブリヤート共和国在住の知り合い曰く、アジア系の人に対してもルースキーという人がいるとのことなので、教科書的な意味以外の使用基準があるのかもしれません。
博物館見学後は日本食食堂に行きご飯を食べて避難中の生活等色々お話しました。実は彼がシェアハウスをしているロシアからの避難者と私は知り合いかなりお世話になっているので、是非会おうと言って別れました。
A君やそれ以外の避難者の人には、たとえどこであっても元気に生活してほしいです。
コメント
コメントを投稿