2023年3月25日 ウランバートル療養日記2:UB市内の大病院での検査編~あれっ意外と待ち時間がない!~

 前回の日記「2023年3月24日 ウランバートル療養日記1:罹患までの道のり編~私がUBで気管支炎と喘息に罹るわけなんてない!~」に書いた通り、3月21日の深夜に呼吸困難に陥ってしまった私は、翌日の昼に命からがら市内の大きい病院で検査を受けることになりました。今回は、その病院での検査やウランバートル市の(良い方の)病院内の様子等について紹介します。

ウランバートル療養日記2:UB市内の大病院での検査編
~あれっ意外と待ち時間がない!~

2. 前提情報:モンゴルの医療水準について

 日本の外務省HPにモンゴルの衛生・医療事情が分かりやすくまとめられているので、それを一部紹介します。

・一般的にモンゴルの医療機関の質は日本に比べて低いです。
公共の救急車(電話103)を要請しても出動には時間を要すことがありますので、私立総合病院の有料の救急車、自家用車、タクシーで病院に移動する方が良いでしょう。
・首都で邦人が利用しやすい医療機関は私立総合病院か私立診療所です。
地方都市では安心して受診できる医療機関を見つけるのは難しいです。
・薬局は市内に多くあり、医薬品を処方箋なしで購入することができます日本製の医薬品をモンゴルで購入することはできませんので、常用薬や発作・緊急時の医薬品は、日本の医療機関で十分な量を処方してもらい、持参することが望まれます。
・歯科治療、検眼・眼鏡作成、ワクチン接種等は渡航前に済ませてください。
(日本国外務省HP「世界の医療事情 モンゴル」より引用)

 以上を見ると、都市部と地方で水準は変わるものの、全体的に日本レベルの高度な医療処置は期待できないことが分かります。ウランバートル市内では、軽症の病気の治療や診察であれば医療サービスを受けられるようです。しかし、慢性疾患の管理・治療や、重症の場合は日本の医療機関にかかることを推奨しています。

 在留邦人の方々とモンゴルの医療事情について話すと、医療機器の種類が少ない、日本じゃありえないような雑な対応をされる、誤診断が多い、日本人は金持ちだと思って治療費を上乗せするため検査量を増やしたり入院させようとしてくる、等の話が出てきます。
 また、自身の検査のための移動を通じて、緊急輸送の問題点を痛いほど実感しました。渋滞のため、病院にたどり着くまでの時間が恐ろしく長いのです。ウランバートルは渋滞が酷く、1時間に1キロも進まないという事態がザラに発生します。また、モンゴル人は概して車間距離が非常に狭いため、道路上に緊急車両に道を譲るためのスペースはほぼ存在しません。救急車がサイレンを鳴らしているにもかかわらず、膠着状態が続いているのを何度も目にしました。モンゴル人界隈のSNSに目を向けると、渋滞のせいで助かるはずの命が助からないという批判を見かけます。

ウランバートル市内の渋滞の様子
News.mnの渋滞に関する記事より)


2-1. 検査を受けた病院の基本情報

インターメッド病院概観(病院公式HPより)

 今回私が検査を受けた病院は、Интермед Эмнэлэг(インターメッド病院)という、市内でも大きな私立総合病院です。ここには、海外で医療教育や研修を受けた医者が多数務めており、国際緊急輸送にも対応しています。英語も通じるため、外国人がモンゴルの病院にいくならまずはここ、という病院の一つです。基本的に予約制・会員制です。
 病院の基本情報は以下の通りです。

Интермед Эмнэлэг(インターメッド病院)
・所在地:Хан-Уул дүүрэг-15(ハンオール区-15), Чингисийн өргөн чөлөө(チンギス通り)
・電話:7001-1111、7710-0103(救急)
・診療時間:月~金08:00~17:0018:00、土09:00~16:00、日09:00~14:00、救急受付24時間
・診療科:内科、循環器内科、外科、婦人科、耳鼻科、眼科、歯科、皮膚科など
・ホームページ:https://www.intermed.mn/?lang=en別ウィンドウで開く
・概要:私立総合病院。世界標準の医療を提供。軽症~中等症なら対応可。国際間の緊急移送に対応可。在留邦人の利用歴あり。
(日本国外務省HP「世界の医療事情 モンゴル」より引用。訂正線赤字は筆者による。

 病院は外見も内装も現代的で非常にきれいでした。


2-2. 医療サービスを受けるまでの流れ

 予約から会計までの流れを簡単にご紹介します。

(1)電話で診察時間を予約する。予約時間の20分前までに行くとスムーズ。
(2)初診の場合、案内カウンターで案内番号を発行し、会員登録用紙をもらって記入する。
(3)自分の番号が呼ばれたら、受付・会計カウンターで会員登録を行う。会員登録料は約11万トゥグルグ(外国人とモンゴル人に差があるかは不明。2023年3月現在)。カード払い可。
(4)受付・会計カウンターで診察場所を指示されるので、そこへ向かう。
(5)診察、検査等を受ける。実施した診察や検査などの書類をもらったら、それを持って受付・会計カウンターへ行って支払いを行う。

 家から病院へ向かうまでの足は職場の車を使用させてもらいました。昼間のウランバートルは非常に渋滞していて厳しい中、いち早く病院まで連れて行こうとしてくれた運転手さん
、ありがとうございました。

案内カウンター(病院公式HPより)

この病院対人サービス部門の求人動画ではインターメッド病院1階の様子が見られます。

2-3. 実際の検査の流れ

 私は呼吸困難に陥っていたため、診察と胸部X線を予約してもらっていました。診察を経て、お医者さんの勧めと私の希望でもっと詳しく検査しようとなり、血液検査と痰検査も追加しました。
 全体的に待ち時間は少ないと感じました。その理由は、受診したのが平日昼間であったこと、番号を呼んでもその患者が来ない場合はすぐに次の番号を呼ぶこと、この病院を利用する層の行儀が他の病院の患者と比較して良い等が考えられます(これについては後述)。
 また私は通訳のモンゴル人に同行してもらっていたため、スムーズに検査を受けることができました。検査の流れは以下の通りでした。

(1)看護師による血圧・脈拍・酸素飽和度検査を受ける。
…基本的に発話する必要はありません。
(2)主治医による診察を受ける。
…問診はモンゴル語か英語が選べます。通訳が同行していたので「私はずっと日本語話せばいいやへっへっへ」と高をくくっていましたが、通訳の方が「この子モンゴル語分かるよ」と医者に言ったが最後、問診における簡単な経緯説明や聴診中のやりとりは私がモンゴル語でやることになりました(私が言葉に詰まった時は助け舟を出してくれたので助かりました)。
(3)診察結果を基に、受ける検査の種類を決める。受付・会計で支払いをする。
…私は海外旅行保険等を利用したかったので、このタイミングで主治医に記入してもらう必要がある書類を見せて説明し、了承を得ました。検査項目が書かれた用紙を渡され、それを持って受付・会計に行き支払いを行いました。昼に受検した場合、検査結果は夕方以降に出るとのことです。
(4)血液検査を受け、痰検査容器をもらう。
…受診時間が昼の場合、指定された場所に医者がいない場合があります。その場合は、別の場所で検査を代行するというシステムでした。例えば、私は血液検査と痰検査を1階の部屋で受けるよう指定されましたが、担当が昼休憩に入っており部屋のドアが閉まっていました。ドアには「4階で検査を受けてください」と書かれた紙が貼ってあったので4階に向かったところ、そこで検査を受けることができました。代理の医療スタッフに採血してもらい、その後痰を入れる容器をもらいました。痰検査は、痰をある程度までため、提出するという形の検査でした。流石にその場でいっぱい痰を出すことはできなかったので、他の検査を受ける合間にためることにしました。
(5)胸部X線検査を受ける。
…再び1階に戻り、レントゲン検査等を行う区画で受付を行いました。検査同意書(モンゴル語or英語)を記入し、案内番号を発行して順番を待ちました。ここでも10分も待つことなく番号が呼ばれ、すぐに検査を受けることができました。
(6)痰検査容器を提出して検査終了、帰宅する。
…痰もある程度溜まったため、再び4階へ行き容器を提出しました。これで全ての検査が終了したので帰ることができます。私は検査受け取りや保険利用用紙の記入についてもう一度確認したかったので、主治医のいた診察コーナーに行きました。主治医は昼休憩に入っていたので会えませんでしたが、看護師に必要事項を伝え、車で帰宅しました。
(6)検査結果を受け取る。
…検査結果は、本人の同意があれば依頼を受けた他者が受け取ることができます。私は症状が辛かったため、先ほど同行してもらった通訳の方に受け取りを依頼しました。夕方17時頃、主治医から電話がかかってきて、検査結果の簡単な報告、今後のアドバイス、そして検査結果を依頼人に渡すことの最終確認をうけました。検査の結果、私の病気は「喘息(asthma)」とのことで、インターメッドでなくともよいので本日中に入院をした方がいい勧められました。私は職場のお医者さんと相談してから判断しようと思い、主治医には一旦考えますと返事をしました。


2-4. 検査時の主治医の診断内容

 検査時の主治医は30代くらいの女性で、優しい口調で英語もできる方で、体調を崩した外国人にとってはありがたい人選でした。
 問診の際に話した内容は前の日記に書いたものと被るため省略しますが、診察の際の彼女の発言が印象に残ったのでご紹介します。

・(喘鳴音を聴診して)この状態でどうやって呼吸してるの⁈
・(私の「やっぱり喉が赤いですか?」という問いに対し)喉は少し赤いし腫れてるけど問題はそこではない、気道とか肺の辺りがやばい。
・検査をしないと分からないけど、呼吸器官が炎症を起こしている可能性が非常に高い。喘息や、最悪肺炎かもしれない。食事量は少量にし、会話量を減らし、運動を控えること。酒や煙草は絶対だめ。今職場の医者に処方されている薬は検査結果が出るまで服用を中止すること。
・詳しく検査しないと分からないけど、診察した限りでは危険な状態のため入院した方が良い。

 検査結果が出る前に上記発言を親や日本人の知人何人かに伝えたところ、親やその世代の人は気遣って「入院した方がいいよ」と言い、ある人は「モンゴル人の医者は診断が間違っていることもあるし、入院させて金をとろうとしてくるから安易に受け取らない方がいいし、日本人の医者がくれた薬を飲んでおいた方がいい」と忠告してくれました。


 今回は結果的に、インターメッド病院の主治医の診断は正解で、診察後のアドバイスに従ったことが命拾いにつながりました。処方薬については、検査の日まで飲んでいた薬が喘息症状を悪化させるものだったことが、検査後の日本人の職場のお医者さんによる診察で判明しました。そのお医者さんも入院してもよい症状と判断したので、モンゴル人の主治医の診断は単なる金稼ぎではなく、病状を的確に判断したものだったのだと思っています。

 この経験から、問診のみや素人判断で対応するよりも、医療事情の芳しくないモンゴルといえども、信頼できる大病院に勤める医者で且つ医療機器による診察と最新の検査結果を見た者の判断に従い対応した方が良いと実感しました。

 とはいえ、インターメッド病院は海外で研修した医者が多く医療機器も整っているのに対し、それ以外の町の病院は基本的に医療水準が日本より低いです。病気等でモンゴルの医療サービスを受ける場合、モンゴル人医師の診断と病院での検査結果に加え、日本人の医師に再診察してもらうのが安全でしょう。



「ウランバートル療養日記3:自宅療養の日々~モンゴルの病院に入院してみたかった気持ちもある~」へ続く

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