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2023年2月25日 モンゴル国内の大学受験事情

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  先日、本当に突然に「そういえば今って大学受験シーズンだよな」と思い国立入試の日程を調べました。なんと、国立大学は今日明日が入試なんですね。このブログを見ている受験生はあまりいないと思いますが、今まで努力してきた人たちが志望校に合格できるようお祈りしています。  今日の記事は、大学受験にちなんで「モンゴル国内の大学受験事情」というテーマで書いて行こうと思います。 試験概要  モンゴル国には、日本の共通テストにあたる「全国統一試験(Элсэлтийн ерөнхий шалгалт, General Entrance Examination)」、通称ЭЕШが存在します。  この試験は2006年度から導入されました。従来の大学(их, дээд сургууль, 総合大学及び単科大学)毎の入試は廃止され、全国的に共通の試験を受けることで入学が可能なシステムとなっています。志望大学に受かるには、受験生は全10科目の中から指定科目を受験し、志望大学が設定している以上の得点を獲得する必要があります。更に、大学は受験生を点数の高い順に合格させるため、より高い得点を目指さなければなりません。また、モンゴル国には地方・都市間に大きな教育格差が存在するため、大学は地方出身者枠を設け、出身地域で大学入学者の割合に大きな差が生まれないように工夫しています *1 。  2023年度の全国統一試験の基本情報は以下の通りです。 試験期間:2023年6月15日(木)~18日(日)(4日間) 申込期間:2023年2月6日~4月14日18時(モンゴル時間)  ※「モンゴル語」科目のみ3月31日18時に申込終了 申込方法: オンライン (←2023年度入学共通試験の公式サイトに飛びます) 受験条件:2023年に中等教育課程卒業見込の者、モンゴル国の大学への入学を希望する者  ※年齢制限なし 試験科目:モンゴル語、英語、ロシア語、数学、化学、物理、生物、歴史、地理、社会  ※上記から必要教科を選択。数学、物理及び化学は100分、それ以外の科目は80分。 受験時持参書類:申込情報を印刷したもの、座席票、中等教育以上の機関の修了証明書、国民IDカード又はそれと同等の身分証明書 オンライン申込の手順(入試公式サイトより引用)  毎年度概ね上記の通りに試験が実施されます。試験期間は、学校の修了式後か...

2023年2月24日 チベット仏教の旧正月:ブリヤート共和国とモンゴル国での体験

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 旧暦のお正月(旧正月)といえば中国の春節が有名ですが、モンゴルを含むチベット仏教圏にも旧正月が存在します。チベット仏教旧正月は中国の春節とは異なる暦を使用しており、その年の旧正月期間はラマが占って決めます。  モンゴル国や、ロシア内のブリヤート共和国、カルムイク共和国及びトゥヴァ共和国等のチベット仏教圏において、旧正月は祝日とされています。少なくともモンゴル国においては、新年以上に長い祝日が割り当てられることもあり、西暦正月以上に「正月」の雰囲気が感じられる期間です。また、ロシアの春祭マースレニッツァ(масленица, maslenitsa)と時期が近く、ロシア連邦のチベット仏教圏では各民族の祝祭が続き、春の訪れを感じる時期でもあります。  ちなみに、旧正月はモンゴル国ではツァガーンサル(цагаан сар, tsagaan sar)、ブリヤート共和国ではサガールガン(сагаалган, sagaalgan)、カルムイク共和国ではツァガンサル(цаган сар, tsagan sar)、トゥヴァ共和国ではシャガー(шагаа, shagaa)、そして本場チベットではロサー(lo gsar)と言われます。  2023年のチベット仏教旧正月の元旦は2月21日でした。  モンゴル語で元日はshiniin neg(新月1日)、2日目はshiniin khoyor(新月2日)、そして3日目はshiniin gurav(新月3日)と言い、この3日間はモンゴル国では国民の祝日となります。2023年のモンゴル国旧正月(以下ツァガーンサル)は21日(火)~23日(木)で、この3日間はあらゆる公共機関や多くの会社・お店がお休みになりました。今年のツァガーンサル休みはあいにく前週と後週の土日に連結しなかったのですが、20日(月)と24日(金)は休む人が多く(特に地方帰省勢)、実質先週土曜から今週日曜までがツァガーンサル期間となっています。  さて、私は今年初めてモンゴル国のツァガーンサルのご挨拶訪問(ゾチロフ зочлох, zochilokh)をしました。5年前の留学期にご挨拶したブリヤート共和国のサガールガンの様子とはまた異なり面白かったので、本日はブリヤート共和国のサガールガンとモンゴル国のツァガーンサルの過ごし方について、私が経験した範囲内で書いていきます。 ブリヤー...

2023年2月18日 ブリヤート民謡コンサートで5年越しの再会(ほぼ思い出語り)

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【注意:今日の記事は思い出多めです。一文でまとめると「青春の思い出(?)が蘇ってジーンとしました。」という内容です。】 ブリヤート民謡コンサートやるってよ  ぼーっとSNSを眺めていると、相互フォローであるブリヤート・モンゴルのナショナリストのネットの知人が下記コンサートの写真や様子を投稿していました。 「Torgony khee(絹の文様)」という馬頭琴とブリヤート民謡のコンサート "Торгоны хээ" Морин хуурын чуулга - TICKET.mn (チケットサイトに飛びます)  本コンサートはモンゴル国立馬頭琴楽団が定期的に行っているモンゴル系の各集団の民謡を特集するコンサート「Торгоны хээ(絹の紋様)」の一環で開かれたものでした。第1部は馬頭琴楽団による演奏(ブリヤート関係なし)、第2部はブリヤート人歌手と馬頭琴楽団によるブリヤート民謡の演奏といった構成でした。  ナショナリスト青年の投稿を「ふーん、ブリヤート民謡のコンサートが昨日あったのね、知ってれば行ったかもなあ」位の気持ちで見ていたところ、歌手の集合写真の中に非常に見知った顔がありました。S氏(探せばすぐわかるけど一応仮名)です。  彼とはリアルではあったことがありません。彼は私の留学中の知り合いの親友で、ブリヤート留学をしている私を珍しがってFBに友だち申請を送ったことが始まりの、日本人モンゴル関係者あるあるのインターネッツフレンズです。最後の連絡から3年は経過していたので、久しぶりに彼の顔を見て驚きと懐かしさでいっぱいになりました。 コンサートへ  彼との思い出 on Internetは後で書くのでひとまず置いておきましょう。上述のナショナリスト青年が「コンサートは今日(18日)もやってるよ」と教えてくれたので、私は速攻でチケットを購入し、一人だと心細いので友人を誘いコンサートへ向かうことにしました。テンションが上がっていたので、返信なくてもいいやくらいの気持ちでS氏にコンサート頑張ってねというメッセージを送りました *1 。  会場はモンゴル国立フィルハーモニー(中央文化宮殿小ホール)でした。 建物は中央文化宮殿と同じですが、入り口が異なるので注意。 フィルハーモニーのゲート。入口は奥に進んで右のドア。 このホールは昨年末に日本の支援で改修工事...

2023年1月23日 寒いけど寒くないウランバートル

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 幕の内も過ぎてしまいましたが、新年あけましておめでとうございます。このマイナー日記ブログも見てくださってる方がいるようで嬉しいです。本年もどうぞよろしくお願いいたします。  今年のモンゴルには例年以上の寒気が訪れ、ウランバートルでも夜中に-40℃を超える日がありました(実は年末から約1ヶ月間は日本に一時帰国していたので、その寒さを十分には経験していません)。  マイナス気温と聞くと、日本人の感覚では非常に寒い場所という印象を抱くと思います。実際寒いのですが、ある意味では寒くありません。今年一発目の日記は、「寒いけど寒くないウランバートル」というテーマで書いて行こうと思います。 スフバータル広場の氷像(2022年12月撮影) 寒いけど寒くない(1)――屋内は暖かい  モンゴルの屋内が暖かいということは、最近は結構日本でも知られてきている感触があります。北海道と同様、モンゴル都市部の建物内部はセントラルヒーティングシステムで暖められ、基本的にどこの建物も一定範囲の温度を保っています。セントラルヒーティングについては、 昨年9月16日の日記「集中暖房の稼働が始まりました」 でも書いているので興味のある方はご覧ください。  モンゴルは外は寒い一方、家の中は非常に暖かく暑いくらいの時もあります。(外は)寒いけど(室内は)寒くないのです。 自宅のセントラルヒーティング。上に乗っているのは一時帰国時にお迎えしたジェンツーペンギンです。 寒いけど寒くない(2)――気温に応じた格好をすれば多少マシ  日本を離れて思ったことの一つに、日本の人は寒さに対応した格好をしているとはいえないということです。その最たるものは、冬に生足でスカートを穿く女子高生です。それ以外にも、コートの前を開けっ放しにしたり、そもそも上着が薄かったり、ブーツではなくスニーカーを履いていたり…。気温に対して薄すぎる装備で出かける人が多いと感じます。  一方、冬のモンゴルでは、おしゃれに全振りした格好をすると冗談でなく死が待っています。そのため、ほぼ全員がクルトカと呼ばれる分厚いダウンジャケットを、前のジッパーを閉めて着用します。人によっては、ウンティ *1 ことウブリーンゴタル(冬の靴)と呼ばれる、表面が鹿の毛皮で内側が我が羊の毛で覆われた暖かいブーツを履きます。ちなみに、私もウンティを愛用しています。そして、頭...

2022年12月31日 今年の振り返り

 早いもので、2022年も本日で終わりです。年を重ねるにつれ、一年が過ぎるのが早くなっているように感じます。今回の記事では2022年の振り返りをし、来年の目標について語ろうと思います。 【全体の振り返り】  あらゆる面において、エネルギー不足感、目が覚めていない感、そして不完全燃焼感がありました。そして、手を付けたあらゆる物事が中途半端にしてしまいました。  エネルギー不足感の原因は、体力面では運動量の減少で体力が落ちたこと、精神面では意識の大部分を仕事に向けたためそれ以外の活動に割り振る精神的エネルギーがなかったことだと思います。物事を中途半端にしてしまうことは以前からたまに顔を見せていた私の悪癖ですが、エネルギー不足がこれを加速させてしまった気がします。  目が覚めていない感は、具体的に表現するのは難しいのですが、エネルギー不足感とも関連していると思いますが、頭にずっと靄がかかった状態のような、一つの事象についてじっくりと深く考える力が弱くなっているような感じのことです。この状態になってしまった理由は、エネルギー不足感の原因と関連しているでしょう。エネルギー不足という状態が目が覚めていない感を誘発しているという面もあるかもしれません。  そして、エネルギー不足感と目が覚めていない感によって思うように身体と頭が働かなくなったことで、あらゆる活動の良や質が下がり、常に不完全燃焼感を感じるようになりました。  簡潔に言うと、「運動不足と老化による体力低下+仕事による精神力消耗→活動量の低下→活動の質の低下」という状態が通年で発生していました。  この状態は修論執筆を控えた院生的にまずかったことは言うまでもありません。退勤後に研究をする元気をなくしてしまったことで、在籍中の院生と比較すると圧倒的に読みこんだ文献量と人と議論した回数が少なくなり、それに伴いアカデミックな思考力も鈍ってしまったという感覚があります。  全体的な評価はこんな感じですが、生活の各方面では良いこともたくさんありました。以下では方面別に所感を書き出していきます。 【研究面】 ・反省点:(既に述べましたが)読み込んだ文献量が少ないこと、そしてじっくり考える方向での思考力が落ちたことです。両者とも身体的・精神的エネルギーの不足が招いた事態でした。学会ももっと積極的に参加すればよかったです。 ・良かったこ...

モンゴルの「クリスマス」について

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 12月のウランバートルで町中を見わたすと、イルミネーションを巻き付けたモミの木、トナカイの耳を付けた若い女の子、赤いサンタクロースの服を着たデパートの店員、赤と緑を基調にした装飾がよく目に入ります。こうして表面だけ見ると、モンゴルは西欧のキリスト教の祭典であるクリスマスを日本のように冬のイベントとして受容したのかと思われます。その感想は完璧にまちがいという訳ではありません。  しかし、モンゴルの「クリスマス」は日本のような商業的性格を強く帯びたイベントではなく(今のところ)、かといって大部分は非キリスト教徒のためヨーロッパのようにキリストの生誕は祝いません。では、モンゴルの「クリスマス」は何をする行事なのでしょうか。    今日の日記では、現代モンゴルの「クリスマス」がどんな性格をもった行事として立ち現れているのか、当地のウェブニュース記事、当地キリスト教系団体のHP、そして自身の観察に基づいて考えたいと思います。 スフバータル広場にあったツリー。2022年12月。 1.源流はロシアのクリスマス  一般的に語られるモンゴルの「クリスマス」的イベント(モンゴル語ではшинэ жилシンジル、新年の意)は、ヨールク(ロシア語のヨールカのモンゴル語訛り)と呼ばれるデコレーションされたモミの木を飾り、子どもは「冬のおじいさん」と「冬のむすめ」にプレゼントと祝詞をもらい、みんなで踊りあり・出し物ありの新年を迎えるパーティー、及びそれらを行う12月~1月までの期間のことを指します。この新年を迎える祭りのことを「ヨールク」と呼びます。本記事ではモミの木のヨールクと祭りのヨールクを区別するために、後者を「ヨールク祭り」または「シンジル」と呼ぶこととします。  モンゴルのヨールク祭りの原型行事は、ロシア帝国で生まれ、ソ連で元の型ができました。1700年、近代化(=西洋化)を推進したロシア皇帝ピョートル1世の命で、元旦がユリウス暦1月1日に定められ、この新しい元日に合わせて新年が祝われるようになりました。  また、この時ピョートル1世はドイツからクリスマスツリーもロシアに持ち込みました。このツリーはクリスマスのための特別な装飾品であり、新年祝い用ではありませんでした。ちなみに、ヨーロッパとロシアのクリスマスの日付のズレは各教会が採用する暦法の違いに由来するもので、祝いの内容(イエス・...

2022年12月11日 犬ぞり@テレルジ国立公園(前編)

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  日本からモンゴルへ大学の先輩が弾丸旅行に来てくれました。何かのツアーに申し込んでいるというわけではなく、本当に単身での旅行のようだったので、私の知り合いの日本語ができる元運転手のおじいさん(以下Tさん)に、今回の旅の運転手兼ガイドをお願いしました。  先輩は土曜日にウランバートル観光、日曜日に犬ぞり体験というプランで来ていたので、私は日曜日の犬ぞりにお邪魔させていただきました(本当はウランバートル観光にも付いていきたかったけどコロナ感染で自宅隔離中だったので無理だった)。犬ぞりは今年2月に私が乗ったことのあるサービスが一番人気とのことで、そこに行くことにしました。 ▼今回行った犬ぞりサービス  今回利用した「Монгол морь, Нохой чарга」(モンゴル馬と犬ぞり)というサービスは、公式FBの紹介文によると、モンゴルで最初に犬ぞりツアーを始めたところで創業8年目とのこと。"New way of winter tourism"という文からは、最近までモンゴルは犬ぞりを観光資源として見出しておらず、犬ぞりはモンゴルの観光としては新しいかたちのサービスであることが窺えます。  今回の日記は長くなってしまったので、前後編でお送りします。 往路  9時半より少し前に先輩の宿泊するホテルに集合して、犬ぞりをやっているテレルジ国立公園へ出発。Tさんの車は娘さんから借りたアメリカ製のごついヤツで、草原へ旅行に出る雰囲気の演出にぴったりでした。この日は曇りで、空は雲で、地面は雪で、視界に白がいっぱいでした。  犬ぞりに行くまでの道中では、先輩からはウランバートル観光の話や、私が既に疑問には思わなくなってしまったモンゴルの自然や町のあれこれの話を楽しく聞いて過ごしました。「モンゴルは山にあまり木が生えていない」という感想には、確かに!と新鮮な驚き。先輩の感想に対するTさんの「木が生えないのは北側。南側やてっぺんの近くは陽が当たるから木が生えるよ」というコメントにも、そういえば!と思いました。ちなみにこれは丘と言えるような低めの山に当てはまることで、アルタイ山脈などの高い山はきちんと頂上の方が剥げています。  先輩の新鮮な目から見たモンゴルの様子を聞きながら、私は最近家と職場の往復だけで町も自然も見れていないので、もっと外に出て周りを見る生活をしよう...